経営者であれば、不安のない日はないでしょう。

売上、資金繰り、人材、後継者、競合の動き――不安の種を挙げればきりがありません。

不安は厄介なものだと思われがちですが、実は不安には大切な役割があります。それは「まだ起きていないことに、あらかじめ備えさせる」という働きです。

不安を感じるからこそ、私たちは準備をし、リスクに気づき、行動を変えることができる。不安がなければ、経営はもっと危ういものになっていたはずです。

問題は、不安そのものではなく、不安との「距離の取り方」ではないでしょうか。

不安を消そうとすればするほど、かえって不安は大きくなる。むしろ、不安を敵とみなさず、「今、自分はこう感じている」とただ観察してみる。

「不安は、なくすものではなく、ともにいるもの」

という感覚が、経営を続けるうえでの支えになる気がします。手放そうとせず、抱えたまま歩いていく。これは仏教でいう「観照」に近い態度かもしれません。

不安の正体を突き詰めていくと、多くは「まだ来ていない未来」への囚われであることに気づきます。今この瞬間、目の前にある仕事に意識を戻す。それだけで、不安は形を変えていきます。

不安をなくすことはできません。けれど、不安とともに歩む力を養うことはできる。それこそが、経営者にとっての本当の安心につながるのだと思います。