所長通信 R8.9 上虚下実
白隠禅師という、江戸中期の禅僧がいます。
若き日、修行のしすぎで心身を病み、動悸や不眠、幻覚にまで苦しんだといいます。今でいう、燃え尽きに近い状態だったのかもしれません。
その禅師を救ったのが「内観の法」でした。頭に上りすぎた気を、丹田(へその下あたり)に降ろす、という方法です。
禅師はこれを「上虚下実」と呼びました。上は虚ろに軽く、下は実ちて重く。この状態にあるとき、人は落ち着いて、正しく物事を見られる、と説いています。
経営者の不調も、似た構造をしているように思います。考えることが多くなると、気は自然と上に上がっていきます。
数字、人、判断、期限――頭の中がいっぱいになり、体は置き去りになる。その状態が続くと、判断が上ずってきます。焦り、苛立ち、決めつけ。冷静に見えて、実は「頭でっかち」になっているだけ、ということが少なくありません。
考えるのをやめて、下に意識を降ろす。
丹田に手を当てる、足の裏の感覚に意識を向ける、深く息を吐く。頭の忙しさから、いったん体に戻る。それだけで、思考は止まらなくても、荒れ方が変わってきます。
経営判断は、頭だけでするものではないのかもしれません。肚が据わっているとき、人は初めて、遠くまで見通せる。忙しい経営者ほど、一日のうちに数分でいい、「下に降りる」時間を持ってみてはどうでしょうか。